ZEB(ゼブ)とは?メリットや3つの基準について解説!

  • 最終更新日:2020年1月29日

ビルや建物における年間のエネルギー収支を0にすることを目指した「ZEB(ゼブ)」をご存じでしょうか?

「ZEB(ゼブ)」は、年間一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。

この記事では、世界における市場規模が急拡大している「ZEB(ゼブ)」にスポットを当てて、

  • 「ZEB(ゼブ)」の概要や条件
  • 「ZEB(ゼブ)」、「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」、「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」の違い
  • 「ZEB(ゼブ)」のメリット
  • 「ZEB(ゼブ)」の現状と導入事例

などについて、分かりやすく解説していきます。

ZEB(Net Zero Energy Building)とは?

ZEB(ゼブ)とは、「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)」の頭文字をとった略称で、ビルなどの建物で消費する年間の一次エネルギーと、創り出すエネルギーの和をゼロにすることを目的とした建物のことを指します。

このZEB(Net Zero Energy Building)は、

  • 再生可能エネルギーで電気を創り出す「創エネ」
  • 高効率機器や自然環境を利用してエネルギーの無駄を省く「省エネ」

の2つによって成り立っています。

再生可能エネルギーで電気を創り出す「創エネ」

ZEB(ゼブ)の実現にまず必要なことは、再生可能エネルギーによる「創エネ」です。再生可能エネルギーには風力発電やバイオマス発電などさまざまありますが、ZEB(ゼブ)を実現するために一般的なのは「太陽光発電システム」です。

太陽光発電システムは再生可能エネルギーの一種で、太陽の光エネルギーで発電を行います。一般住宅にも広く浸透しており、建物の屋根などに設置することで発電を行えるため、ZEB(ゼブ)の実現には優れた「創エネ」手段といえます。

高効率機器や自然環境を利用してエネルギーの無駄を省く「省エネ」

ZEB(ゼブ)を実現するためにもう1つ重要なのが、高効率機器(アクティブ技術)や自然環境(パッシブ技術)を利用してエネルギーの無駄を省く「省エネ」です。創エネでいくらエネルギーをつくったとしても、エネルギー消費量が多くてはまかないきれません。

「年間エネルギーの収支をゼロにする」ことを目指すZEB(Net Zero Energy Building)にとって、省エネは欠かせない技術なのです。

  • 高効率機器の活用による省エネ(アクティブ技術)

高効率機器とは、省エネ性能が高いエアコンや、LED電球のことを指しています。たとえば人感センサーなどがついたエアコンや照明であれば、人がいるところに集中的に風を送ったり、人がきたときだけ照明をつけたりするので、省エネにつながります。

  • 自然環境の活用による省エネ(パッシブ技術)

また、窓から差し込む太陽の光や風など自然環境を利用して、エアコンや照明などの稼働時間を減らすということも重要です。自然環境を利用したパッシブ技術には、

  • 昼間は太陽光を利用して照明の使用を減らす
  • 窓から差し込む日光を遮断して室温の上昇を防ぐ
  • 建物の断熱性能(外皮性能)を向上させる
  • 窓を開けて換気を行い温度調節をする

などが挙げられます。

「蓄エネ」や「エネルギーマネジメントシステム」も重要

ZEB(ゼブ)は上記で挙げた「創エネ」と「省エネ」を基本として成立しますが、実は「蓄エネ」や「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」も重要な役割を果たしています。

  • 蓄電池に電気をためておく「蓄エネ」

「創エネ」を担当する太陽光発電システムは、基本的に晴れている日中にしか発電を行うことができません。そのため、雨や雪など悪天候の日や、太陽が沈んだ夜間は「創エネ」を行えません。つまり電力会社から電気を購入する必要が生じます。

蓄電池を導入して太陽光発電システムでつくった電気をためておく「蓄エネ」を行うことで、悪天候の日や夜間であっても、つくった電気を使えます。

ZEB(ゼブ)実現には、「蓄エネ」はかなり重要な要素であるといえるでしょう。

  • 消費エネルギーを最適化する「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」

ZEB(ゼブ)を実現するために重要なことは、「いかに消費するエネルギー量を減らせるか」という点です。さきほど紹介した省エネ機器の導入などによる「省エネ」も重要ですが、ビルや建物全体をコントロールする「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」の導入も効果的です。

ZEB(ゼブ)で活用されるEMS(エネルギーマネジメントシステム)としては、「BEMS(Building and Energy Management System)」が代表的です。BEMSはビル内のエアコンやエレベーター、照明といった設備のエネルギー消費状況を「見える化」するのが特徴です。

この「見える化」により、フロア内に人が少なくなった時間帯はエアコンや照明といった設備の稼働率を下げることも可能になるため、より省エネにつながります。また、消費電力が目に見えることによって、社員やスタッフ一人ひとりの省エネ意識の高まりにも期待がもてます。

ゼロ・エネルギーの達成状況に応じて3

ZEBは「消費する一次エネルギーと、創り出すエネルギーの和をゼロにすることを目的とした建物」と紹介しました。しかし、すべての建物が太陽光発電や省エネ機器、蓄電池、BEMSなど全部を導入できるわけではありません。ゼロ・エネルギーの達成状況にも建物ごとにバラつきがあります。

ZEBではこのような状況を踏まえ、ゼロ・エネルギーの達成状況に応じて以下の3つに分類されています。

省エネでエネルギー消費量を50%以下まで削減:ZEB Ready(ゼブ・レディ)

まず、省エネでエネルギー消費量を50%以下まで削減した建物・ビルについては、「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」と定義されています。

「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」は主に省エネに力を入れている建物やビルが該当し、従来の建物・ビルで必要なエネルギーの半分以下(50%以下)まで消費電力を減らすことが条件となっています。

創エネ+省エネでエネルギー消費量を25%以下まで削減:Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)

次に、創エネ+省エネでエネルギー消費量を25%以下まで削減した建物・ビルについては、「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」と定義されています。

「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」は、「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」に創エネをプラスした取り組みをしている建物であり、必要なエネルギー量を省エネによって減らし、使うエネルギーに対しては、創エネでつくったエネルギーでまかないます。最終的には、従来の建物・ビルで必要なエネルギーの4分の1以下(25%以下)まで消費電力を減らすことが条件となっています。

創エネ+省エネでエネルギー消費量を0%以下まで削減:ZEB(ゼブ)

最後にご紹介するのが、創エネ+省エネでエネルギー消費量を0%以下まで削減する「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」です。

ZEB(ゼブ)は「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」の創エネ部分をさらに強化して、創エネと省エネによって、建物・ビルで消費する年間の一次エネルギーの収支を0%以下にすることが条件です。

上記でご紹介した3つの定義はZEBシリーズと呼ばれ、最終的にはZEB(ゼブ)にすることが望ましいですが、その前段階である「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」や「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」という定義をつくることによって、ZEBを導入するハードルを下げて、普及を促す狙いがあります。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)のメリット

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に必要な要素や定義について解説したところで、ここからはZEBを導入するメリットについてご紹介していきます。

光熱費(電気代)を削減する

企業が自社ビルや建物をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)にするメリットとしてまず挙げられるのは、光熱費(電気代)が削減できるという点です。気になる光熱費の削減量ですが、消費エネルギーを0%以下にするZEB(ゼブ)であれば、光熱費は0円に抑えられます。

省エネのみを強化する「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」でも、年間の光熱費は約40~50%削減可能になるだろうと環境省が試算しています。

また、ZEBを導入する建物が、オーナーが使用する自社ビルか、入居者が使用するテナントビルかによってもメリットが異なります。
環境省のZEB PORTALには自社ビルの場合、テナントビルの場合それぞれの光熱費削減メリットのイメージが記載されています。

自社が所有する下記条件の自社ビルで「ZEB Ready」の50%省エネルギービルを実現した場合を想定します

  • 面積当たりの年間光熱費が2000円/㎡
  • 面積10,000㎡
  • ZEB Ready実現前の年間光熱費2000万円

このとき、ZEB Ready実現後のオーナー負担年間光熱費は、2000万円×50%で1000万円となります。

一方で、テナントビルの場合は、共用部がオーナーのメリット、テナント専有部がテナントのメリットとなります。
そのため、下記のような条件のテナントビルを想定したとき

  • 面積当たりの年間光熱費が2000円/㎡
  • 面積10,000㎡
  • ZEB Ready実現前の年間光熱費2000万円
  • テナント専有部が65%(テナント負担1300万円)
  • 共用部が35%(オーナー負担700万円)

ZEB Ready実現後のテナント負担は1300万円×50%=650万円、オーナー負担は700万円×50%=350万円となります。
このように、ビルの使用用途によって、ビルオーナーとしての光熱費削減メリットが異なってきます。

※上記はあくまでも仮定の金額です。ZEB導入による光熱費の削減額は、ZEBの達成状況や建物・ビルの状況によって異なります。
(上記試算の参考資料:環境省「ZEB PORTAL ZEB化のメリット」)

なお、太陽光発電システムなどを導入して「創エネ」も行い、よりエネルギー消費量の削減につながる「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」や「ZEB(ゼブ)」にすることで、さらに光熱費の削減量を増やすことが期待されます。

CO2削減により環境経営にもつながる

現在、世界は「地球温暖化」という気候変動問題に直面しています。この問題を解決するために、世界の主要先進国を中心として締約国会議(COP)を開き、環境問題について話し合っています。

2015年に開かれた第21回締約国会議(COP21)において、各国の温室効果ガスの削減目標を取り決めた通称「パリ協定」が合意されました。このパリ協定において、日本は「2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で26%削減する」ことを中期目標として掲げました。

こうした世界の流れを受けて、民間の間では、ESG投資やSDGsなど、「環境へ配慮する企業の価値が高まる」という現象が起き始めています。そして日本でも、企業がCO2の削減や環境への配慮を積極的に行う「環境経営」が求められるようになってきました。

こういったなかで、どのように環境経営に乗り出すべきか頭を悩ませている経営者も多くなってきています。ビルのエネルギー収支をゼロにすることを目指した「ZEB」は、エネルギーを太陽光発電などの再生可能エネルギーで創り出すため、火力発電に比べるとCO2を排出しません。また、省エネについても、CO2を排出する化石燃料を使用して発電した電気の購入量を減らしているわけですから、地球温暖化の防止に貢献していることになります。

そのため、ZEB(Net Zero Energy Building)への取り組みをするだけで、環境経営につながるのです。

環境経営について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

環境配慮でイメージアップ!? 企業が自然環境へ配慮する方法

不動産価値の上昇

上記で紹介した環境配慮における評価だけでなく、建築物の環境性能評価(CASBEE、LEED、BELSなど)においても、ZEBは高い評価を受けやすくなっています。

環境省が提示しているデータによると、こういった環境認証を取得しているビルは、取得していないビルに比べると新規成約賃料などの不動産価値が向上する傾向にあります。

災害時でも少ないエネルギーで事業継続が可能

地震や台風などの災害時、電気などのエネルギーの供給が止まってしまった場合でも、太陽光発電システムなどを備えたエネルギーの自給自足が可能なZEBであれば、事業継続が可能な場合があります。

もちろん、エネルギー以外の交通インフラなどの問題は別にあるとしても、「電気が止まっているから仕事ができない」といった状況は避けられる確率が高くなるのは、企業にとっては大きな強みといえるでしょう。

従業員の生産性の向上

ZEBの特徴の1つとして、「生活環境や労働環境の快適性」があります。つまり、エアコンなど空調機器の使用を我慢する省エネではなく、省エネ性能が高い機器の導入や建物の断熱・遮熱性能をアップさせることによる省エネを行うため、従業員にとっては快適な環境となるわけです。

ZEBはエネルギー面で優れているだけでなく、「快適性」という面でも、従来のビルや建物を大きく上回っているといえます。

ZEB(ゼブ)の現状と導入事例

日本政府はZEBについて、

  • 2020年度までに新築公共建築物などでZEBを実現する
  • 2030年までに平均的な新築建築物でZEBを実現する

という目標をたて、国や地方自治体からも補助金を出すなどして、ZEBを推進してきました。この背景には、ZEBを推進することで日本のCO2削減目標に貢献するだけでなく、世界のZEB市場が急速な成長を遂げていることをも挙げられます。

拡大するZEB市場を支える太陽光発電市場を支える太陽光発電

世界のZEB市場は、2020年には27兆円、2030年には36兆円にまで拡大するという研究結果が発表されています(出典:ミック経済研究所、野村総合研究所)。
(参考資料:ビジネス+IT「ZEBとは何か? 基礎からわかる省エネを超えたゼロエネ建物の可能性

この市場規模は、2020年の時点で住宅版のZEBといわれるZEHに匹敵しており、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー市場よりも大きくなっています。

世界中で拡がり続けるZEB市場ですが、この波は日本にも来ると予想されています。そこで重要となるのが「創エネ」を担当する太陽光発電の存在です。

特に、日本においては産業用太陽光発電(10kW以上の太陽光発電システム)のFIT(固定価格買取制度)の廃止検討や、1kWhあたりの売電価格の低下によって、これまでの投資としての太陽光発電ではなく、発電した電気を自社で使用する「自家消費型太陽光発電」が重視されはじめてきています。

ZEBの導入事例

ZEBは、すでに国内のさまざまな建物で導入されています。ここでは、その一部を紹介していきます。

まとめ

この記事では、ビルや建物における年間のエネルギー収支を0(ゼロ)にすることを目指した「ZEB(ゼブ)」について、概要やメリットについて紹介してきました。

「ZEB(ゼブ)」は太陽光発電などで電気を創る「創エネ」と、高効率機器の導入などによりエネルギーの無駄を省く「省エネ」の2つを中心に成り立っています。また、それを補助する形でエネルギーをためておく「蓄エネ」、エネルギーを効率的に管理する「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」があります。

また、ZEBは達成度の違いで「ZEB(ゼブ)」、「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」、「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」の3つに分類されます。

これからZEBを導入していきたい経営者の方は、まずは高効率機器(省エネ)の導入だけでいい「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」から開始して、徐々に太陽光発電(創エネ)も組み合わせる「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」や「ZEB(ゼブ)」を目指していくのが現実的でしょう。