「工場やオフィスの電気代節約のため、太陽光発電を導入したい」と考えていても、
初期投資費用が掛かることから断念する方も少なくないはず。
近年は、買取価格の下落傾向が見られることから、
「投資」から「消費」へと考え方をシフトする企業もありますが、
初期投資費用が掛かるのはどちらも同様です。
ですので「中小企業投資促進税制」などの制度を活用することで、
イニシャルコストを抑えることができます。
この「中小企業投資促進税制」は2019年3月31日までの期限とされていましたが、
2019年度の税制改正により、中小企業投資促進税制の期間が延長され、
2020年度末(2021年3月31日)まで利用できることとなりました。
中小企業投資促進税制とは、名前の通り中小企業の「投資」を後押ししてくれる制度です。
改正ポイントを踏まえながら、太陽光発電にどういったメリットがあるのか見ていきましょう。
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2017年度の中小企業投資促進税制改正ポイント
2017年度に行われた、税制改正。
改正の背景には、人口減少や少子高齢化といった構造的な問題があるといわれています。
企業においては労働力人口の減少や国際的な競争の活発化といった課題が挙げられますが、
こういった課題を中小企業者がクリアできるよう、企業を後押しするべく取り組まれているのが、
中小企業投資促進税制や中小企業経営強化税制などの制度です。
中小企業投資促進税制では、「設備投資」に関して支援を行っています。
条件としては、【中小企業者等】が【一定以上の設備を取得】し
【事業の用に供すること】が挙げられます。
2017年度の税制改正においては、これまで「上乗せ措置」として扱われていた設備投資が
中小企業経営強化税制へ改変されました。
生産性を向上させる設備や、収益力強化に導入される設備については、
中小企業投資促進税制の範囲外に変更されました。
また、2019年の改正によって、2019年3月末までだった期間をさらに2年間延長し、
2021年3月末まで利用できることとなりました。
太陽光発電設備は中小企業投資促進税制の対象となる?
中小企業投資促進税制では、機械装置等といった対象設備の取得や製作などを対象に、
取得価額の30%の特別償却、あるいは7%の税額控除が選択できます。
ただし、税額控除に関しては個人事業主か、資本金3,000万円以下の法人が対象となります。
一定の機械装置等の対象設備を取得や製作等した場合に、
取得価額の30%の特別償却又は
7%の税額控除
が選択適用(税額控除は資本金3,000万円以下の法人、個人事業主のみ)できるもの
(参考資料:中小企業庁「中小企業税制パンフレット(令和元年度版)」 p18より引用)
また対象設備を「事業の用に供していること」もポイントですので、
自宅に設置されている太陽光発電設備は対象外となることに注意しましょう。
主な目的は、中小企業の生産性向上等を図ることとされており、
一定の設備に関して適用が受けられます。
では、具体的にどういった企業や設備が対象となるのか見ていきましょう。
中小企業投資促進税制の対象者
中小企業投資促進税制の対象となるのは、
①中小企業者等、
②従業員数1,000人以下の個人事業主のいずれかに該当する者です。
ここでいう中小企業者等とは、資本金額1億円以下の法人や、農業協同組合などを指します。
注意しておきたいのは、指定事業者が限定されていること。
たとえば、農業や林業、製造業などは該当しますが、電気業は含まれていません。
そのため、売電を目的とする太陽光発電の場合、指定事業者に該当しません。
ただし、工場やオフィスの電気を賄うといった理由で太陽光発電を行う場合(自家消費)には、
電気業に当たらないため、中小企業投資促進税制の利用が検討できます。
指定事業者について詳しく知りたいという場合には、中小企業庁のホームページで確認が可能です。
どういった設備が対象となる?
対象となる設備は、以下の通りです。
機械および装置(1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの)
測定工具および検査工具(1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの
(事業年度の取得価額の合計額が120万円以上のものを含む))一定のソフトウェア(一のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの
(事業年度の取得価額の合計額が70万円以上のものを含む))普通貨物自動車(車両総重量3.5t以上(注2))
内航船舶(全て(注3))
(注1)中古品、貸付の用に供する設備は対象外です。
(注2)普通貨物自動車は、道路運送車両法に規定する普通自動車で、貨物の運送の用に供するものが対象です。
(注3)取得価額の75%が対象となります。
(参考資料:中小企業庁「中小企業税制パンフレット(令和元年度版)」 p18より引用)
特別償却と税額控除、魅力的なのはどっち?
中小企業投資促進税制では、個人事業主や資本金3,000万円以下の法人の場合、
30%の特別償却か7%の税額控除が選択できます。
パーセンテージが大きいことから、特別償却を選択する人もなかにはいるかもしれません。
しかし、特別償却とは減価償却費を前倒しして計算する方法を指し、
設備投資を行った年の節税対策としては役立ちます。
ただし、償却期間全体で見た場合、トータルで税金が減るというわけではないため、
長期的な節税対策として取り入れるのには不向きです。
それに対し、税額控除は実質的な値引きを行うため、長期的な節税対策として利用できます。
そのため、設備投資を行った初年度の税金負担を安く済ませたいという場合には特別償却、
長期的な視野で有利な資金繰りをしたいという場合には税額控除が魅力的といえます。
いずれも、状況に応じて異なりますので、どちらが魅力的か吟味する必要があります。
「中小企業等経営強化法」の固定資産税の特例は2018年度で終了
税制改正により適用期間が2年延長されたことにより、
2019年度、2020年度も引き続き中小企業投資促進税制が利用できることとなりました。
しかし、全量売電の場合は中小企業投資促進税制の指定事業者に該当しないため、
「固定資産税の特例」がある「中小企業等経営強化法」を検討していきたいところでしたが、
この「中小企業等経営強化法」に基づく「固定資産税の特例」も2018年度で終了となったため、
「全量売電で太陽光投資を始めよう」と考えている方はご注意ください。
中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制を活用して太陽光発電を始めよう
中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制が2021年3月31日まで延長されたことにより、
これから太陽光発電を始めようと考えている方にとっては有利な状況です。
即時償却、特別償却により当期の法人税の圧縮や、法人税の控除が出来ますので
検討してみてはいかがでしょうか?
期間は2020年度末(2021年3月31日)までなので早めの検討を
中小企業経営強化税制は認定や証明書が必要なため、
思っていたよりも時間がかかってしまいヒヤヒヤした、という企業も過去にいらっしゃいました。
2020年度末(2021年3月31日)まで期間も延長されているとはいえ、早めのチェックをオススメいたします。
※中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制の適用には条件があります。
※ 自家消費型太陽光発電は、工事や各種手続きをすべて含めると半年~1年以上もかかるケースも少なくありません。
また、実際に工事が完了し、稼働していないと認定されないケースがほとんどです。
工事が完了して税制優遇の手続きをする頃には申込期限を過ぎてしまった、という事がないよう十分ご注意ください!