太陽光発電の100%即時償却が可能となる中小企業経営強化税制はご存知でしょうか?
上手に利用することで、中小企業の節税につながります。
この記事では、中小企業経営強化税制によって可能となる
100%即時償却のメリットや、申請条件、
またA類型、B類型の申込手続きなどについて解説していきます。
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中小企業経営強化税制とは?
「中小企業経営強化税制」は、平成28年7月1日より施行された
「中小企業等経営強化法」の認定を受けた事業者が受けられる優遇措置制度です。
具体的な内容としては、生産性などの向上を目的とした設備を新規導入した場合に、
「即時償却」または「税額控除」どちらかの優遇措置を受けることができます。
この「生産性などの向上を目的とした設備」には、
「自家消費+余剰売電」を目的とした太陽光発電も含まれます。
なお「自家消費+余剰売電」については、後半の項目で詳しく解説していきます。
中小企業経営強化税制のメリットは「100%即時償却」
中小企業経営強化税制の最大のメリットといえるのが「100%即時償却」です。
「100%即時償却」などについて詳しく解説していきます。
そもそも減価償却とは?
「100%即時償却」の解説をする前に、まずは減価償却について理解しておきましょう。
減価償却とは、導入した大型設備などの耐用年数(寿命)に基づいて、
数年にわたって徐々に経費(損金)として計上していく仕組みのことです。
そのため、例えば500万円で太陽光発電を設置したとすると、
中小企業経営強化税制を使用しない通常の状態であれば、
太陽光発電の法定耐用年数「17年」に渡って減価償却していくことになります。
100%即時償却って何がすごい?
「中小企業経営強化税制」を利用することで、
たとえば太陽光発電に設備投資を行った500万円を、
100%当期の経費として計上することが可能となります。
ちなみに即時償却とは、本来は設備ごとに定められた耐用年数に渡って処理する減価償却を、
設備を購入した初年度に「100%」全額を経費(損金)として計上することができる制度です。
法人税は「所得」に基づいて課されますが、大幅な売上があり所得が伸びてしまった年などは
それに伴って法人税も増えてしまいます。しかし即時償却して損金として計上することで、
法人税の計算のベースとなる「所得」を抑え、支払う法人税を抑えることができます。
そのため、「中小企業経営強化税制」の即時償却を利用することで、
当期の大幅な法人税の抑制が期待できます。

税制利用しない場合
- 税引き前当期利益
1,500万円 だった場合…
- 法人税は
525万円
1,500万円 × 法人税率35%
即時償却をした場合
- 太陽でんき®
導入費用
1,200万円を即時償却
初年度に一括損金として 計上して、利益を圧縮
- 税引き前当期利益
300万円
- 節税効果
420万円
(525万円-105万円)
- 法人税は
105万円
300万円 × 法人税率35%
税額控除も選択可能
「中小企業経営強化税制」では、上記の「即時償却」と「税額控除(10% or 7%)」のどちらか一方を選択して適用するものになります。
もう片方の優遇措置である「税額控除」ですが、
こちらは取得価額のうちから10%の税額控除を受けることができる制度になっています。
※ なお、資本金3,000万円超~1億円以下の法人の場合、税額控除の割合は7%になります。
「税額控除」は、即時償却(法人税の繰り延べ)とは異なり、純粋に「支払うべき税金を減らす」という制度です。
中小企業経営強化税制の対象設備
すでに例としても取り上げてきましたが、
自家消費型太陽光発電もこの「中小企業経営強化税制」の対象設備に該当します。詳しく見ていきましょう。
「A類型」と「B類型」の違い
中小企業経営強化税制の対象となる設備には
A類型(生産性向上設備)とB類型(収益強化設備)が存在します。
それぞれには、以下の違いがあります。
A類型(生産性向上設備)
A類型(生産性向上設備)の対象となる設備には、
- 機械装置(160万円以上/10年以内)
- 測定工具及び検査工具(30万円以上/5年以内)
- 器具備品(30万円以上/6年以内)
- 建物附属設備(60万円以上/14年以内)
- ソフトウエア(70万円以上/5年以内)※情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの
(参考資料:中小企業庁「中小企業税制パンフレット(令和元年度版)」 p09より引用)
が含まれます。なお、10年以内などとなっている箇所は、
その指定年数以内に販売開始された設備である必要があります。
B類型(収益強化設備)
B類型(収益強化設備)の対象となる設備には、
- 機械装置(160万円以上)
- 工具(30万円以上)
- 器具備品(30万円以上)
- 建物附属設備(60万円以上)
- ソフトウエア(70万円以上)
(参考資料:中小企業庁「中小企業税制パンフレット(令和元年度版)」 p09より引用)
が含まれます。
なお、太陽光発電システムは、上記のうちの「機械装置」に該当します。
その要件として、A類型(生産性向上設備)についてはエネルギー効率等が旧モデルとの比較で年平均1%以上向上している設備とされています。
B類型(収益強化設備)については年平均の投資利益率が5%以上見込まれる設備とされています。
中小企業経営強化税制の申請条件
中小企業経営強化税制の申請はどの事業者でも行えるわけではなく、厳密に定められています。
中小企業経営強化税制の申請条件を分かりやすくまとめると、以下の通りです。(2020年2月時点での情報)
「中小企業者等」に該当すること
はじめに、中小企業等経営強化法19条1項に定められた「中小企業者等」に該当することが必要となります。
- 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
- 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
- 協同組合等(中小企業等協同組合、出資組合である商工組合等)
(参考資料:中小企業庁「中小企業税制パンフレット(令和元年度版)」 p09より引用)
(上記に該当する場合でも対象外となる法人がございます。また協同組合につきましても対象となる組合が定まっております。
詳細は 中小企業庁「中小企業税制パンフレット(令和元年度版)」をご確認ください)
経営力向上計画を作成し、計画申請・認定を受けること
中小企業経営強化税制を受けるためには「経営力向上計画」を作成し、生産性向上設備又は収益力強化設備として事業所管大臣に申請・認定される必要があります。
「経営力向上計画」は人材育成・財務管理・設備投資など、中小企業が経営力を向上するために実施する計画です。
(原則、設備の取得前に「経営力向上計画」の認定を受けることが必要となります)
経営力向上計画の策定方法・提出方法などは、中小企業庁のウェブサイトをご確認ください。
>> 参考:経営サポート「経営強化法による支援」(中小企業庁)
中小企業経営強化税制の対象になる業種
中小企業経営強化税制の対象になる業種としては、以下が該当します。
- 製造業
- 建設業
- 農業
- 林業
- 漁業
- 水産養殖業
- 鉱業
- 卸売業
- 飲食サービス業
- 一般旅客自動車運送業
- 海洋運輸業及び沿海運輸業
- 内航船舶貸渡業
- 道路貨物運送業
- 倉庫業
- 港湾運送業
- ガス業
- 小売業
- 宿泊業
- こん包業
- 郵便業
- 情報通信業
- 損害保険代理業
- サービス業
など、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業が、中小企業経営強化税制の指定事業となります。
「全量売電」は中小企業経営強化税制の対象外
なお、太陽光発電で作った電力を全て売電する「全量売電」を目的とする場合、
電気業の用に供する設備となり、中小企業経営強化税制の適用事業の対象外となります。
(参考資料:中小企業経営強化税制 Q&A集 ※PDF)
太陽光発電で中小企業経営強化税制の対象となるのは、
- 発電した電気を自社で使用する「自家消費」
- 自家消費で余った電気のみ売電する「自家消費+余剰売電」
のいずれかになります。
余剰売電を行う場合も、発電が見込まれる電気量のうち販売を行う電気量が2分の1を超える場合については、
中小企業経営強化税制の対象外となります。
中小企業経営強化税制を申し込む流れ
ここでは、中小企業経営強化税制を申し込む流れについて解説していきます。
A類型、B類型共通の申込手続き
①工業会等による証明書や、経済産業局による確認書を取得します。
②当該設備(太陽光発電システム)を利用し生産性を上げるための
「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受けます。
③認定を受けた計画に基づき、当該設備(太陽光発電システム)を取得します。
A類型は「工業会証明書」が必要
A類型に分類される業種が中小企業経営強化税制を申込む場合、
「工業会証明書」が必要となります。
「工業会証明書」の詳しい取得方法につきましては、
経済産業省(中小企業庁)が発行している「工業会証明書の取得の手引き」などをご覧ください。
B類型は「経済産業局による確認書」が必要
B類型に分類される業種が中小企業経営強化税制を申込む場合、
「経済産業局による確認書」が必要となります。
「経済産業局による確認書」の詳しい取得方法につきましては、
経済産業省(中小企業庁)が発行している「経済産業局による確認書の取得の手引き」などをご覧ください。
まとめ
太陽光発電の「100%即時償却」が可能となる中小企業経営強化税制を紹介しました。
「中小企業経営強化税制」は、文字だけの説明ではイメージしづらい部分があり、
あるいは処理が間に合わず見送ってしまったご担当者もいらっしゃるかもしれません。
しかし、こうした税制を活用しないと、節税の機会を逃してしまいます。
エコスタイルの「太陽でんき®」なら、自家消費型太陽光発電のプロとして、
こうした優遇制度のご提案や、工事の間に合う時期等についてもサポートいたしますので、
安心してご相談ください。

期間は2020年度末(2021年3月31日)までなので早めの検討を
中小企業経営強化税制は認定や証明書が必要なため、
思っていたよりも時間がかかってしまいヒヤヒヤした、という企業も過去にいらっしゃいました。
2020年度末(2021年3月31日)まで期間も延長されているとはいえ、早めのチェックをオススメいたします。
※ 自家消費型太陽光発電は、工事や各種手続きをすべて含めると半年~1年以上もかかるケースも少なくありません。
また、実際に工事が完了し、稼働していないと認定されないケースがほとんどです。
工事が完了して税制優遇の手続きをする頃には申込期限を過ぎてしまった、という事がないよう十分ご注意ください!
即時償却を見込んだ自家消費型太陽光発電の導入を検討されていましたら、お気軽にお問い合わせください。