2018年の税制改正により、設備投資に掛かる固定資産税の特例や、
事業継承・再編の促進などさまざまな点が見直されました。
企業としてすでに手続きに追われている方もいらっしゃるかもしれません。
今回覚えておきたいポイントは、所得拡大促進税制。
これは、簡単に言うと給料の引き上げを行った企業に対し税額控除を行う制度です。
今回の改正によって中小企業にとって大きなメリットとなる可能性がありますので、
まずは制度の基本的なポイントを押さえ、2017年度の改正と何が違うのかを見ていきましょう!
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所得拡大促進税制とは?
所得拡大促進税制とは、従業員の給料を引き上げた企業に対し税制面でのサポートを行う法律です。
雇用促進を目的とする制度とは異なり、従業員との雇用契約によるリスクはありません。
改正された背景には“アベノミクス”による経済政策があり、従業員の給料が上がることにより
消費が増加し好景気を生み出すといった、好循環を生み出すことが目的とされています。
特徴としては、業種や地域の指定がないこと。
また、ハローワークなどへの手続きが不要なこと、雇用人数の増減と無関係なこと、
会社の設立・開業初年度でも適用されることなどが挙げられます。
ただし、赤字の場合には優遇税制が適用できない、
確定申告で適用を受けないと遡って税額控除が受けられないといったデメリットもありますので、
きちんと所得拡大促進税制を利用できるか確認しておきましょう。
2017年度に改正されたばかりの所得拡大促進税制ですが、
今回の改正によってさらに中小企業のメリットとなる内容が盛り込まれているのです。
まずは、2017年度の改正ポイントを確認し、2018年度のものと比較してみましょう。
2017年度の所得拡大促進税制改正ポイント
2017年度の税制改正では、所得拡大促進税制の適用要件が見直されました。
ポイントは、中小企業に対しての賃上げ支援で、一定の条件を満たせば
法人税の控除が受けられるよう変更されたこと。
この場合の「中小企業」とは、資本金額が1億円以下の法人を指します。
対象期間は2018年3月31日までとなっており、対象者の業種や従業員数に制限はありません。
適用条件は以下の3つ。
ひとつは、その年度の給与等支給額が基準年度と比較して一定以上増加していること。
次に給与等支給額の総額が前年度以上であること、
最後は平均給与等支給額が前年度を上回ることです。
2017年度の改正では最後の要件が見直され、
賃上げ率が2%未満の中小企業はこれまで通り10%の法人税控除。
2%以上の場合、基準年度からの増加額10%に加え、
12%の税額控除が受けられるように変更されました。
また、同年の税制改正では中小企業経営強化税制が導入され、設備投資に掛かる節税対策も可能に。
2017年4月から2019年3月31日までの間に「一定以上の機械装置等を指定事業の用に供した」場合、
即時償却や税額控除が受けられるようになりました。
こちらは売電を目的としない自己消費型太陽光発電設備であれば対象の範囲内です。
2018年度の所得拡大促進税制改正ポイント
2018年度の税制改正では、2018年4月1日から2021年3月31日に始まる事業年度を対象として
所得拡大促進税制の改組が行われました。
中小企業でみると、2017年の制度では法人税額10%だった控除割合が15%へ。
さらに一定の条件を満たす場合には給与等支給増加額の25%が控除対象となります。
ただし、控除税額は当期(控除を受ける年度)の20%が上限です。
賃上げ率1.5%以上の増加で法人税額15%の控除へ!
まず、15%の控除を受けるには、
「当期と前年度の平均給与を比較し、1.5%以上増加していること」という条件を満たさなければなりません。
たとえば、今年度の平均給与が25万円、昨年度の平均給与が23万円だった場合、
差額の2万円÷23万円=約8.6%となります。この場合、税額控除を受けることが可能です。
25%控除を受けるための条件とは?
25%控除を受けるには以下の2つの条件をクリアする必要があります。
- 平均給与の比較結果が5%以上であること。
- 従業員の研修費や教育費を当期と前年度で比較し、増加割合が10%以上であること。
あるいは中小企業者等がその事業年度終了の日までに
中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、
計画に沿って経営力向上が確実に行われたと証明されること。
ただし、注意しなければならないのは2018年度からは、
「設立したばかりの中小企業は税額控除が受けられない」ことです。
2017年度までは設立年度でも制度が利用できましたが、2018年度からは不可能となりました。
これは、適用要件として当期と前年度の比較が必要となったからでしょう。
また、2年間在籍している従業員が不可欠となります。
たとえば、途中入社や退社などで欠員が出て、
従業員がいない期間があったといったケースは対象外となります。
注目しておきたいその他の税制改正ポイント
その他に注目しておきたい、2018年度の税制改正のポイントとして、
交際費等の中小法人の交際費課税の特例や、
少額減価償却資産の特例が2年延長されたことなどが挙げられます。
環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)は2018年3月31日で廃止となりましたが、
今後は中小企業等経営強化法により固定資産税の軽減措置や金融支援などが受けられますので、
「投資」よりも「消費」に焦点を絞った太陽光設備が増加する可能性があるでしょう。
また、2030年度のエネルギーミックス実現に向けて
「省エネ再エネ高度化投資促進税制」の創設が盛り込まれていることにも注目です。
工場等での大規模な省エネ投資をはじめとする投資への支援強化も行われることとなり、
今後の再生可能エネルギー活用法が焦点となっています。
所得拡大税制でよくある質問
ここでは、所得拡大税制でよくある質問を、Q&A形式でご紹介していきます。
- Q:「雇用者給与等支給額」の増加額を決定する基準年度について、2013年4月1日より前に法人を設立していたものの基準事業年度において事業を開始していない場合はどうなりますか?
- A:2013年4月1日以降に雇用者給与等支給額を初めて支給した年度の金額70%相当額が、基準雇用者給与等支給額になります。
- Q:「雇用者給与等支給額」の増加額を決定する基準年度について、2013年4月1日より前に事業を開始しているが、給与などの支払いが無い場合はどうなるのですか?
- A:役員報酬のみで給与などの支払いが無く、基準雇用者給与等支給額が0円となる場合は、計算上、基準雇用者給与等支給額を1円とすることとなっています。
- Q:2016年4月1日から雇用促進税制と併用する場合、所得拡大税制の適用において気をつけることはありますか?
- A:所得拡大税制の適用年度の「雇用者給与等支給増加額」から、一般被保険者(雇用保険)の増加人数×適用年度の一人当たりの「雇用者給与等支給額」×30%の金額を控除する必要があります。
- Q:平均給与等支給額の計算方法について、育休・産休など休職により給料支給を行っていない場合はどうすればいいですか?
- A:分母の「月別支給対象者数」の合計人数から、休職などで給与を支払っていない人数を引き、分子の「継続雇用者給与等支給額」に含めないようにします。
2018年度の税制改正で中小企業に追い風が!
2018年度の税制改正では、アベノミクスの影響により中小企業にとって有利な環境がもたらされています。
これから従業員の給与アップを図ろうと考えている、少しずつ取り組んでいるという中小企業も、
参考にしてみてはいかがでしょうか?
所得拡大促進税制を利用して、節税対策に乗り出してみませんか?
※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。