太陽光発電を工場の屋根に設置した場合の建物の強度計算について、一級建築士に聞いてみた
エコスタイルでは、太陽光発電システムの設置を検討されている施設の現地調査と、建物の強度計算を行い、お客様に強度計算書をご提出させていただいています。今回は、株式会社エコスタイル 執行役員 設計部長の畑田氏(一級建築士)に、自家消費型太陽光発電の設置に際しておこなっている、建物の強度計算についてうかがいました。
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自家消費型太陽光発電システムの設置にあたって、建物の強度計算がなぜ重要なのか
そもそも設計部とは。屋根設置・地面設置の両方の太陽光発電システムの設計と建物の強度計算を担当
──まず、設計部ではどういった業務をされているのでしょうか
エコスタイルで設置する太陽光発電システムの設計図や強度計算書を作成しています。
(自家消費型太陽光発電のような)屋根に設置する場合だけではなく、地面設置の太陽光発電システムにおいても、
地盤の強度や杭の必要本数なども計算をしています。
いずれの場合も、太陽光発電システムが本当に安全に設置できるかどうか、災害に耐えられるかどうかを検討しながら設計しています。
基本的には、現地調査担当からの報告と、お客様からいただいた図面で設計しています。
自家消費型太陽光システム設置時の建物の強度計算ではなにをどのように見ているのか
──法人の屋根に設置する自家消費型太陽光発電の場合ですが、具体的にどのような強度を計算しているのでしょうか。
「建物に太陽光発電システムを載せられる強度があるかどうか」と、「設置後に強風に耐えられるかどうか」を見ています。
例えば、太陽電池モジュールは1枚が20kgなので、1000枚載せると屋根に20tの負荷がかかります。かなりの重量ですよね。
また、太陽電池モジュールは屋根の上に設置しますので、風の影響を受けやすくなります。
モジュールの重量に耐えられるかどうか、そして、設置場所での強風に耐えられるかをちゃんと検証しなければいけません。
折板屋根は軽いため、負荷に耐えらえるか見極める必要がある
特に、工場や倉庫の屋根だと、折板屋根が多いですよね。折板屋根は軽量なんですよ。なので、梁や柱もその軽い屋根を載せる想定で作られています。
屋根を軽くすれば、柱や梁も小さいもので済みます。ですが、その上に、そもそも20tの太陽光発電システムを載せることは建物を設計した時点では想定されていません。
だからこそ、太陽光発電システムの重量を含んだ建物の強度計算をして、本当に太陽光発電システムを設置できるのか計算しています。
近年の台風の突風も考慮しなければならない
あとは、台風の風圧ですね。特に最近は巨大台風も増えています。
屋根に太陽電池モジュールを固定する取付金物が全体でどの程度必要か、太陽電池モジュール一枚あたり取付金物を何個使用すれば台風の風圧に耐えられるかどうか、といった部分を見ています。

折板屋根に設置された取付金物の例。屋根に取付金物がボルトで挟み付けて固定され、その上に太陽電池モジュールを設置、抑え込み金物で固定している。
実際の強度計算書とその内容
太陽光発電システムは建築設備扱い。建築確認申請書の図面から、強度を計算している

エコスタイルより提出している建物の強度計算書(一部)。建物の屋根材や梁などの各部位の風圧力や地震時の応力、荷重計算が記載されている
なぜこの強度計算書が必要なのでしょうか。
屋根に載せる自家消費型太陽光発電システムは建築設備の扱いになるためです。エレベーターと同じですね。
だから、建築基準法の基準に合致していなければならず、施設の責任者も設置した設備の安全性を確認しなくてはいけません。
ですから、建物の強度計算書は、自家消費型太陽光発電を設置するお客様に必ず提出しています。
どこかに申請書を出す必要があるわけではないのですが、安全の確認のために必要だからです。
建物の強度計算書を算出するに際して、必要な書類などはありますか。
お客様がすでに提出している建築確認申請書に記載された図面をご提供いただきます。
加えて、梁や柱の寸法が分かる書類です。これらによって建物の現時点の強度が分かってきます。
あとは、弊社の現地調査担当者が撮ってきた写真で、屋根に使用されている金物の状況や梁の間隔などの現状を参考にしています。
計算書の記載内容について
ここからは建物の強度計算書の記載内容についてうかがいたいと思います。
耐風速や耐積雪の係数などの記載がありますが、これらについて教えていただけますでしょうか
算出される耐風圧や耐積雪などですが、これらは場所によって基準風速などが決まっています。
そういった土地ごとのデータと、太陽電池モジュールや取付部材の強度の数値を組合わせて、ツールで算出しています。
耐風圧を例に、どういった計算をしているのかご紹介します。
突風に対する安全性は建物の地域・用途、高さ、ガスト影響係数によって算出される
まず場所によって違う基準風速ですが、例えば大阪市なら風速34m/sとなります。
この基準風速に、建物の高さや、「地表面粗度区分」によるガスト影響係数をかけ合わせることで、
その建物の場合の安全性を算出しています。

エコスタイルより提出している建物の強度計算書(一部)。基準風速や各種係数と、建築確認申請書の図面に記載された屋根材や梁のデータから、太陽電池モジュール設置後の負荷を計算していく
「地表面粗度区分」というのは、海からの近さや建物の密集度合いによる地域の区分です。
海沿いや平野は強い風が吹きやすいですし、ある程度建物が集まっていれば風が弱くなります。
この「地表面粗度区分」によって「ガスト影響係数」が決まってきます。
ガスト影響係数は瞬間風速の影響を示す係数です。
建物の高さにもよりますが、基準風速が34m/sだとして瞬間風速はだいたい2倍ほどの60~70m/sを想定します。

建物の強度計算に使用するエクセルツールには、基準風圧や地震係数、製品の強度・重量・面積などが網羅されている。計算結果の数値をもとに、その建築物が建築基準を満たすかを精査しているという。
耐積雪の係数についても簡単に教えていただけますでしょうか
こちらも風速同様に、1平米あたり何メートル積もるかのデータがあるので、それを使用します。
太陽電池モジュールを設置後、建物に積雪があった場合も鉄骨の使用基準を満たしているかどうかを見ています。
建物によっては使用できないメーカーなどもあるのでしょうか
そういう影響はどちらかと言えば太陽電池モジュールを固定する取付金物で発生します。
例えば、風速が40m/sと強い風が吹く立地でしたら、取付金物も強い風圧に耐えられるものを選びます。
ほとんどないケースですが、そうした制約条件のもとに選んだ取付金物が、屋根の形状に合致しない場合などがあります。

取付金物の試験強度の資料
取付金物自体も安全率が決まっており、キロニュートンで負荷を想定した試験強度が設定されています。
たとえば、この取付金物だったら5.4kN(キロニュートン)で破断する可能性があります。
ですから、太陽電池モジュール1枚に対する取付金物の個数と風による負荷を計算し、試験強度のだいたい半分程度の負荷になるように設定しています。
強度計算の結果、自家消費型太陽光発電システムを載せられない建物もある?
そうして計算をしてみた結果、載せられない場合もあるのでしょうか。例えば建物が古い場合などはいかがでしょうか
載せられない建物に関してですが、基本的に新耐震基準以前に建てられた建物には載せられません。昭和56年(1981年)以前に建てられた建物です。
やはり旧耐震基準の建物は地震に弱いので、太陽光発電システムを仮に設置できたとしても、地震には耐えられないと考えられます。
ただし、構造計算書があり、強度的に余裕があったり丈夫に作られていると考えられる場合は、慎重に計算したうえで問題が無いと判断する場合もあります。
建物の強度によって、載せられる太陽電池モジュールの枚数は決まっているのでしょうか
太陽電池モジュールの枚数は基本的には(弊社内基準で)屋根の面積の50%までと決めています。それ以上の枚数をご要望の場合は、
構造計算書をもとにその都度確認しています。
地震や台風はどの程度の規模が想定されているのか、一番多いお問合せは台風について
お客様から営業担当者を経由して、設計部に質問がくることもあると思います。お客様はどのようなところを気にされていますか
一番多いお問合せはやはり、「ほんとうに台風の影響に耐えらえるのか」という内容だと思います。特に、海沿いの工場の方は気にされているところだと思います。
そのようなお客様からの質問やご要望に関しては、営業担当経由でその都度ご対応しています。
あとは、建築確認申請書、構造計算書のご準備に時間がかかり、図面が無い場合などは私が実際に現地にうかがって現地調査するときもありますよ。
まとめ
今回は、自家消費型太陽光発電システムにあたっての、建物の強度計算を担当する、一級建築士の畑田氏にお話しをうかがいました。
建物の屋根に太陽光発電システムを設置する場合、建物の強度や災害対策が懸念されます。
エコスタイルでは、事前の現地調査といただいた図面をもとに、一級建築士による建物の強度計算・検証をおこなったうえで、強度計算書をご提出させていただいております。
強度計算書では、設置する建物の立地や使用されている屋根材・梁の情報をもとに、耐震性や耐風圧を計算。
太陽光発電システムを載せることで建物に荷重がかかった状態でも、その強度が維持されるかどうかを検証させていただいております。
今回ご紹介した建物の強度計算のほか、電気料金の削減シミュレーションも、ご契約前に無料で行っております。
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